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集団分析

GROUP

私共ではストレスチェックが法制化される前から、職業性ストレス簡易調査票を用いた組織分析とフィードバックを実施してきた実績があります。
現在もストレスチェックの契約先事業場に対しては集団分析を行ない、納品時に事業場の傾向や注意すべき部署、改善のアドバイス等を含めた報告を毎年行なっております。
その⻑年にわたるストレスチェック集団分析に関するノウハウをお伝えできればと思います。

ストレスチェックの個人結果を集団毎に集計した物を「集団分析」と言います。集団分析は職場の現状を把握するための大変貴重な資料であり、組織における社員の労働状況に関するBIGデータであると言えます。
集団分析結果は個人情報ではないため、その利用方法および活用方法については各事業場に任されています。

集計単位の考え方

配慮すべき注意点としては、少人数の集計区分はどこかと合算する、あるいは集計対象外にするなど、個人の特定に繋がらないような工夫が必要です。
更に私共では、少人数・多人数どちらの集計区分もお勧めしておりません。なぜなら少人数での集計は構成人員による集計結果のブレが大きく、統計的な信頼性が乏しいからです。結果、「ベスト」と「ワースト」といった極端な結果の部署は少人数部署から発生しやすくなります。

一方で多人数の集計はブレが抑えられるものの部署の「特徴」が見えなくなり、「大まかな傾向」しか把握できない事となり、その結果、部署の「強み」や「課題」を見つけられない事になります。多すぎるデータにより、数値が丸まってしまう事によるものです。
そこで私共では契約事業場には、集計区分をある一定範囲に収めるようアドバイスさせていただいております。

分析単位の工夫

良くある集団分析の分析単位の例は以下の通りです。集団分析の分析単位を適切に設定する事で、組織の現状把握や職場改善に使える有益な資料とすることができます。多くの契約先事業場の担当者様はこの設定に一番頭を悩ませておられます。

部署
部署毎の集計は組織全体の現状把握の方法として必要不可欠であり、変化を把握するためにも重要だと思われます。
職責
経営層、中間管理職、現場のリーダー、一般職といった職責による分析も重要ですが、必ず上層部はデータ数が乏しく、一般職が多くなるため、結果の比較には工夫が必要かと思われます。
職種
間接部門、製造現場、設計部署、品質管理、営業職、開発職、管理職等、その組織における機能で区分して集計する事も、思わぬ結果を確認できる時があります。業務の一連の工程の中でのボトルネックや、課題が無いかを確認、把握するには良い方法と言えるでしょう。
在籍年数
若手の早期離職や、ベテラン層の労働意欲、中間層の疲弊等、組織における具体的な課題がある場合、大変有効な分析結果を得られる事があります。この場合、大切なのは在籍年数をどこで区切るのか、集計区分の設定に入念な検討が必要となります。この区分設定が適切でないと集団分析結果から見える課題や特徴がぼやけてしまう事に繋がります。
プロジェクト
IT業界、建設業等、顧客から依頼される大きな案件毎のプロジェクトで⻑期的な業務が進む場合に有効な方法だと思われます。順調に進んでいる現場と、そうでない現場では当然、様々な違いがあると思われます。
一方で抱えているプロジェクトは全て同じ時期に始まり、同じ時期に終了する訳ではないため、⻑期的なプロジェクトを複数抱えているような業態の企業に有効な分析方法だと言えるでしょう。
雇用形態
正社員、出向社員、外国籍労働者、契約社員、アルバイト・パート、技能実習生、派遣社員といった雇用形態による分析も、様々な労働者の受け入れを必要とする日本企業にとっては今後重要な分析方法になると思われます。
勤務形態
日勤・交替勤務等のシフト制度、または在宅・リモート勤務、社屋に出勤、出先での就労等の就労場所による分析方法も、勤務形態の変更が導入された場合や、多様な労働形態を抱え、今後の健康管理施策を考える企業には、一度確認しておくべき重要な分析方法だと思われます。

分析項目名称について

職業性簡易ストレス調査票57項目、あるいは新職業性簡易ストレス調査票80項目のどちらにも「仕事の量の負担」や「仕事の質の負担」、また「上司の支援」「同僚の支援」等の分析項目が存在します。
これらの項目の分析結果は実は予め設定された3問の回答結果が反映されて各項目の分析結果となっております。その上でどのような3問が問診項目として設定されているのか良く知っておく必要があります。

例えば「仕事の量の負担」では・・・

  1. 非常にたくさんの仕事をしなければならない
  2. 時間内に仕事が処理しきれない
  3. 一生懸命働かなければならない

以上の3問となっています。

「仕事の質の負担」では・・・

  1. かなり注意を集中する必要がある
  2. 高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ
  3. 勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない

以上の3問となっています。
以上の2項目ではあまりイメージの違いが無いかと思います。

一方で、「上司の支援」では

  1. どのくらい気軽に話ができますか?
  2. 困った時、どのくらい頼りになりますか?
  3. 個人的な問題を相談したら、どのくらいきいてくれますか?

以上の3問となっています。

② と③は「上司の支援」という項目名に対して、違和感の無い問診文章だと思われます。一方で①の問診の文章は「上司の支援」というよりは「日常会話の気軽さ」あるいは「上司との関係性の近さ」といったニュアンスが大きいように思われます。
そう考えると「上司の支援」という分析項目には「日常会話の気軽さ」と「困った時の支援・相談」といった内容が1:2の比率で含まれているという理解をした上で集団分析結果を確認する必要があると思われます。

また新職業性簡易ストレス調査票80項目では、更に多くの分析項目名と問診の文章のイメージに乖離があると思われる部分が存在しています。設問内容を良く理解せずに分析項目名の言葉のイメージを鵜呑みにしてしまうと集団分析結果を誤解して把握する事に繋がってしまいます。

各事業場の担当者は、予め分析項目が何について質問しているのかを充分理解しておく必要があると思われます。

総合健康リスク

「総合健康リスク」とは以下の項目について総合的に計算し、就労によって健康問題を引き起こすリスクがどの程度あるかを示したものです。

  1. 「仕事の量の負担」と「仕事のコントロール」から「量・コントロール判定」を計算
  2. 「上司の支援」と「同僚の支援」から「支援判定」を計算
  3. 「量・コントロール判定」と「支援判定」から「総合健康リスク」を計算

全国平均値は100とされており、数値が100よりも小さいと、働く事による健康問題を引き起こすリスクは少なく、100よりも大きいと、働く事による健康問題を引き起こすリスクは高いとされています。

ただし職場や仕事内容により「総合健康リスク」の理解には少し注意が必要です。
「総合健康リスク」は、「仕事の量」、「コントロール」、「上司の支援」、「同僚の支援」の4項目を分析の材料としているため、製造業企業の製造現場等のような「ライン作業」あるいは「単調な作業が多い業務」は高い数値が算出されがちです。

その理由としては以下の理由が挙げられます。

製造現場は生産量を高め、多くの製品を作るため、当然多くの業務量を求められます。一方で自分達で仕事の都合や手順を変更する事は難しく、コントロール権限を与えられる事は少ないでしょう。
また上司の支援は何か問題が起こった場合に限られており、常日頃から上司が支援するような現場は稀であると思われます。同僚の支援も同様で、就労開始時には、マニュアルや作業手順書等を元に、どうやって作業するのか、教えてもらうことは当然ですが、一通りの教育が終了すれば一人での作業を求められます。
つまり、その作業者一人一人の作業の質が、製品の品質に繋がっているのです。

総合健康リスク

反対に「仕事の量」が少ない製造の現場は、その製品に需要が無く、売り上げに繋がっていない、あるいは何らかの理由で忙しくない現場である事を示しています。そのような製造現場を抱えて、ビジネスとしての製造業は果たして成り立つでしょうか?

また常日頃、「上司や同僚が支援」する職場とは、何らかの問題が頻発し、現場のスタッフの手が止まり、生産効率が悪く、常に作業が停滞することが多い現場の可能性があります。

そのためカイゼンやQC、5S、マニュアル化、人材育成が進んでいる製造現場では「総合健康リスク」は高くて当然という事が言えるでしょう。

一方で、先々の予定や、在庫、需給予想を立てて生産調整をする必要がある生産管理部門や、顧客との契約に関わる営業部門等は「仕事の量」こそ多いものの、「コントロール」は高く、常日頃から相談する事が多くなるため「上司の支援」「同僚の支援」も多くなる傾向にあります。

その結果、「総合健康リスク」は上流工程や、営業・間接部門では多くの場合、低い数値が算出されます。

上記のような状況では「総合健康リスク」は「業務のスタイル」を示している物であり、「就労上の健康リスク」を適切に示しているのか、現場を総合的に確認し、部署によっては「総合健康リスク」よりも他の指標を重要視する必要があると言えます。

高ストレス者割合

ストレスチェック制度の中では状況の思わしくない方を「高ストレス者」としてピックアップして、必要に応じて医師面接の機会を提供するようになっています。この高ストレス者基準には以下の方法が代表的に用いられています。

職業性簡易ストレス調査票57項目における高ストレス対象者基準

  1. ストレス反応点数(自覚症状)が77点以上の場合(多くの症状を抱えているとして「高ストレス者」)
  2. ストレス反応点数(自覚症状)が63〜76点であり、なおかつ、職場のストレス要因+周囲の支援が76点以上の場合(症状はグレーゾーンであり、就労環境も良くない状態として「高ストレス者」)

上記の①と②を併せた基準での「高ストレス者割合」はおよそ11〜12%であることが分かっています。貴事業場の高ストレス者割合は何%でしょうか? 各部署の高ストレス者割合は何%でしょうか?

また高ストレス者は、ストレスチェック実施後の1年間において、高ストレスで無かった者に比べ、疾病休職に至るリスクが数倍高い事が調査研究の結果分かっています。
高ストレス者の多い部署は、職場の健康管理上のリスクが高く、「要注意」と言えます。

ストレスチェックで何が分かるのか?

ストレスチェックでは「総合健康リスク」、「高ストレス者割合」以外にも、様々な事が集団分析によって分かります。
多く使われている職業性ストレス簡易調査票の種類によって、以下の通りに分析項目を分類する事ができます。

ストレスチェックの法制化から数年が経過した現在、基本的な職業性ストレス簡易調査票57項目からバージョン アップし、80項目、120項目バージョンに移行されている事業場が多くなっているのが現状です。みなさんの外部委託先機関にも実施可能か確認されてはいかがでしょうか?